【活動報告】「現役志摩の海女さんと語る!海女の魅力 in海博」第2回を開催しました

鳥羽市立海の博物館と三重大学海女研究センターが主催するイベント「現役志摩の海女さんと語る!海女の魅力 in海博」の第2回が10月22日に開催されました。

イベントの概要はこちらから。

今回は志摩市阿児町安乗の海女さんお二人にお越しいただきました。
海女歴35年、60代の先輩海女さんと、海女歴13年程度、50代の後輩海女さんです。

まずは海女になったきっかけから。
先輩海女さんは、出産後に本格的な海女漁を始めたそうです。

子ども産み終わってなんにもすることないし、うちの母が海女だったんです、「そんなことしとっても退屈やし、ちょっと磯行ってみたら」ということで、行ってみたらもうやみつきになってしまって(笑)
(中略)自分の足で磯に遊びにいくくらいだったのが、カマド(海女小屋)の仲間たちが「そんなことしとってもいかんで、船に乗ってみて」っていう感じで、乗せてくれたんです。
そしたら便利やし、「ここにアワビがおるよ、サザエがおるよ」って教えてもらって、それから。(先輩海女さん)

なお私の経験上、「磯に遊びに行く」というのは海女さんの謙遜の表現であることが多いように思います。
「遊び」と言いつつ、実はしっかり獲物を採ってらっしゃるケースがけっこうあるような。

仲間との、当時の切磋琢磨の様子もいきいきと語ってくれました。

(漁獲高が)悪いと「何しに来たん」って言われるくらい(笑)
「なんでも採るもんあるのに、なんでこんなもんしか採ってきやへんの」とか言われてさ。腕が上がらんくて「泳いでばっか」って言われて(笑)
それで「こんなことではいかんな」って思って。(先輩海女さん)

後輩海女さんは、実家の民宿の繁忙期の合間に海に行きはじめたそうです。

忙しくない時期の収入源として、近くの浜に歩いて行って岩場でちょこちょこ採ってたんですけど。
海女さんって一人だとけっこう事故があるんですね。団体行動が基本で。
この人(先輩海女さん)のお姉さんが来い来いって、何も知らんまま行ったらもうえらいめにあって(笑)「なんだこれ!」と思って(笑)
私船酔いするんですね、酔って気持ち悪くなってたらこの人が「もう帰れ!」「帰れそんなもの!」って(笑)
でも(沖にいるので)帰れへんし、嫌々潜って、その繰り返しでなんとか今の状態です。厳しい先輩に鍛えていただきながら(笑)(後輩海女さん)

「つらい思いをしてもまた潜ろうという気持ちになったんですか?」の問いには、

休んでると堤防から皆が泳いでるのが見えるんですよ。すると、もう、なんかこう行きたくなってくるというか、自然を見てるとね。変な気持ちになっちゃって。矛盾してるんですけど。
でも緊張して朝ごはんも食べれんくって。「今日どうなるんだろう」って食べれんくなる、そすと船酔いするでしょ、酔っ払ったまま採れないでしょ、叱られるでしょ……それでまた朝が来るわけです(笑)
逃げることもできたんですけど、メンバーが面白かったんです。めちゃくちゃなんですよ、海女小屋の中、本当にめちゃくちゃ(笑)家族でもこんなひどいこと言わへんわって。(後輩海女さん)

お二人の語り口が軽妙で、開始早々から会場は笑いの渦に包まれます。

海の博物館調査によると、先輩海女さんがデビューした1980年代後半、安乗には70人の海女さんがいました。
現在は15人ほどで、男性の海士も近年増えて10人程度いるそうです。

安乗は4月16日から9月14日までアワビ漁をします。冬は12月から2月末までナマコ採り。
今年は赤潮の影響でほとんどアワビ漁に出られず、例年50日程度なのに対し30日程度だったそうです。

道具については、ここでも新たな発見が。

スカリの上に、シンクでよく見かける黒いゴム蓋がくくりつけられています。
海女小屋の先輩の発明で、獲物をスカリに入れやすい上、一旦中に入った獲物は外に出てこられないという仕掛けです。
以前はゴム紐で縛っていましたが、わずかな隙間からナマコやアワビが出てしまうため、画期的な発明だったそうです。

また、タンポが浮き輪状ではないのにも理由があります。

(浮き輪の形だと)ただ掴まるだけ。これは腹を乗せられる(=タンポの上にお腹を乗せることで、上半身をまるごと海上に出すことができる)。
(中略)この上に乗ると「ハァ〜」と思うことがある。この上に乗って、トドみたいに(笑)(先輩海女さん)

後輩海女さんも「肺の位置が海中にあるより、海上にある方が断然楽」と話していました。

スカリの網も「サザエムスビ」という海女さん独特の結び目の作り方で、漁師さんの網とは異なるそうです。

地域によっては海女さんが主役の年中行事がありますが、安乗にはなく、毎日海女小屋単位と個人単位でそれぞれ祈るそうです。

海女小屋では、伊勢神宮と伊雑宮にお参りした際持ち帰った饌米を、出漁前にいただきます。
また出漁前には、浜や船の上からそれぞれ信仰する対象にお祈りをささげます。

私は船に乗ってから、心の中で(祈る)。私は八大龍王を信仰していて、伊勢の朝熊山や鳥羽の青峰山にお祈りします。(先輩海女さん)

私は安乗神社の方を向いて、船に乗る前に(祈る)。
それがブームになっちゃって、違う人たちも来はじめて(笑)
ちょっと、私が参っとんのに、抑えといてほしいなあとか思ったり。横から参ってくるから被ってくやん!って(笑)(後輩海女さん)

それに対し先輩海女さんが、「私もときどき、この子が参っとる前から(身を乗り出して遮るように、自分が神社に手を合わせるジェスチャーで)『よっ』って(笑)」と笑いを誘っていました。

安乗は志摩市のなかでは比較的磯焼けの被害が少ないと言われていますが、それでも磯場が石灰化して海藻が根から抜け落ちてしまう、魚による海藻の食害が目立つなど、環境の急激な変化を目の当たりになさっていました。

そんな状況でもなんとか海女漁を続けていきたい、という思いが海女さんの語りの端々から伝わりました。

トークイベントは11月19日まで毎週続きます。皆さまぜひお越しください。
安乗の海女さん、本日はありがとうございました。

(吉村真衣)

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第1回 2022年10月15日 志摩志島の海女さん
第2回 2022年10月22日 志摩安乗の海女さん