ようこそ! 海女研究センターへ

鳥羽志摩の海女漁とは

三重県鳥羽志摩地域の漁村で、今なお、体ひとつの素潜りで漁を営む女性たち。海女の歴史は原始社会に遡ります。前近代には日本列島と韓国・済州島にしか女性の素潜り漁は存在せず、世界的に希少な漁業です。

日本のなかではこの地域が、海女漁の中心地です。減少が続くとはいえ、全国の海女さんの約半数、700人ほどが、現在でも元気に海で活躍しています。
海女漁は女性が担う生業であり、伝統的に資源管理の意識が強く、自然に寄り添う持続可能型漁業として、また無理をしない健康な働き方という点などでも、近年注目を集めています。その歴史性もあいまって、鳥羽志摩の海女は2017年には国の重要無形民俗文化財に指定され、同年に日本農業遺産、2019年には日本遺産にも認定された、鳥羽志摩を象徴する、地域の「宝」です。

海女研究センターとは

三重大学では2008年から、立場や所属、専門分野も様々な人たちで「海女研究会」という組織を作り、約10年間にわたり海女に関する学際的な研究活動を続けてきました。その実績を基盤として、この間、海女文化振興事業の中核施設となってきた鳥羽市立海の博物館の一角をお借りし、2018年3月に海女研究センターを設置しました。

私たちは「海女」だけを顕彰したいのではありません。「海女」を切り口に、この地域の漁業、そして海女さんが暮らす漁村の維持発展を願って、活動を続けています。また、研究成果を社会に広く還元するとともに、様々な活動への参加を通して、学生たちが地域の課題を学び、社会経験を積む場ともしています。

海女研究センターの活動

海女関係アーカイブ・データベースの構築と活用

海女研究センターの基幹事業です。海女漁、海女文化、漁村文化に関する文献・画像・映像など、あらゆる資料情報を集積しています。特に、海の博物館が開館以来撮影してきた写真・映像フィルムについて、永く保全するためにデジタル化し、キャプション(解説文)をつける作業を続けています。成果の一部はHPでも公開しています。

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海女漁村でゆかりの古写真を展示し、学生たちと一緒に地元の方から昔のお話を聞き取るワークショップも行っています。

海女文化に関する情報発信
市民向けの連続講座(海女学講座)や、現役の海女さんを海の博物館にお招きしてのトークショーなどを通して、海女文化や漁村文化の魅力を広く発信しています。

海女研究集会の開催
これまで行ってきた海女研究会を引き継ぎ発展させたものです。海女文化や漁村文化に関心を持つ内外の研究者を集めて、公開での研究会(シンポジウム)を行っています。
東アジア各地の海女漁、海女と海藻との関わりなど、幅広いテーマで多様な分野の研究者による活発な議論を交わしていて、今後も研究の輪を広げていきます。

学生による海女文化発信
大学での授業と連動して、学生たちが鳥羽志摩の漁村で見聞したことや、海女さんたちから聞き取ったことを、レポートや卒業論文などの形で発表する活動です。海藻文化の調査や、子供たちに海の博物館の海女展示を解説する台本作成なども行いました。

郷土学習プログラムの開発
鳥羽市内の小中学校と連携して、理科教育の観点から、海女漁の特性を科学的に理解するための実践的なプログラムを開発しています。磯ノミの使い方、海女さんの呼吸法、「山当て」の技術などを視覚的に示すDVDを学校現場で試行しています。

海女漁村の空間(景観)構造の研究
建築学の見地から、海女漁村の建造物や集落の空間構造を、実地での測量や聞き取りなどにより調査しています。海女漁村の景観の価値が明らかになりつつあり、その成果は鳥羽市の景観計画にも反映されています。

里海の保全と磯根資源の増殖に関する研究
海女漁を維持する上で最も重要な、獲物となるアワビ、サザエ、ナマコ、海藻等の海洋資源の増養殖に関する研究です。三重大学伊勢志摩産業振興教育研究センター、生物資源研究科水産実験所と連携した取り組みです。

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