【活動報告】答志島で寝屋子の聞き取り調査をしました
日本ファミリーホーム協議会(https://www.japan-familyhome.org/)の皆様と、11月2日に鳥羽市答志島で寝屋子の聞き取り調査をしました。
ファミリーホームとは、こどもを里親や児童養護施設職員などの養育者が家庭に迎え入れて養育する「家庭養護」のことで、日本ファミリーホーム協議会はその活動を全国的に支えています。
共同養育の視点から寝屋子に関心をお持ちで、今回の調査では地元の経験者の方々に当時や現在のお話を伺いました。
答志島答志町に古くから伝わる寝屋子制度は、青年期の男子数人が「寝屋親」の家に寝泊まりし、「朋輩」としての絆を深める風習です。
男子(主に長男)の中学卒業が近づくと、親たちは数人のグループをつくり寝屋親探しをはじめます。
寝屋親になることを引き受けた家は、「寝屋子」と呼ばれるその男子たちに自宅の一室を「寝屋」として貸し与え、寝屋子たちは自宅の夕食後から翌朝までそこに寝泊まりします。
寝屋子の期間は15歳から27歳くらいまでの間、もしくは結婚するまでで、寝屋子が解散するとOBからなる「朋友会」に加入して一生の付き合いを続けます。
当時の写真などを見せてくださる方もいました。
寝屋子はもともと漁師の制度で、寝屋子は寝屋親から漁師として生きるノウハウを教わったそうです。
答志では現在、漁師を選ぶ人が減り、高校や大学に進学する人が増えています。
交通アクセスの問題から、大学はもとより高校で部活に所属する場合も下宿が必要で、そのため寝屋に毎日寝泊まりすることが難しく、GWやお盆、お正月などの帰省時に通うケースがほとんどだそうです。
しかし「寝屋子は答志に必要な制度」という言葉がありました。
寝屋子の絆でつながった朋輩、そして朋輩たちからなる朋友会は、答志の暮らしを支える重要な基盤のひとつです。
象徴的だったのは冠婚葬祭のお話。
たとえば葬儀では、故人の家族や親戚ではなく朋輩がすべての面倒をみます。
土葬だった時代には、墓穴を掘り棺を埋めるのも朋輩の役割でした。
朋友会は町のあらゆる社会組織の基盤にもなっており、朋輩は生涯にわたって、フォーマルにもインフォーマルにも「生活のすべてを支え合う」そうです。
近年、進学率の上昇やプライバシー意識の変化など、寝屋子をとりまく環境は大きな変化を迎えています。
今回いただいたご縁を機に、今後も答志町固有の風習である寝屋子制度について聞き取りを続けていきたいと思います。
(吉村真衣)