【フィールドワーク通信】71. 浦口楠一さんに魅せられて

5月22日(月)ベルリン在住のキュレーター、ソニア(Sonia Voss)さんと5年ぶりに再会しました。

故浦口楠一(うらぐちくすかず)氏の写真にかかわる調査のために志摩市への再訪となりました。

故浦口楠一氏(1922年~1988年)は、志摩市布施田出身。真珠装身具の製作、卸、小売販売業を営む傍ら、写真撮影を開始。

1950年代から70年代の志摩の風土とくらし、生業、特に海女漁を中心に多くの作品を残されています。

1956年~「カメラ毎日」月例入選を皮切りに、二科展入賞など数々の賞を受賞。

1979年 写真集『志摩風土記』自費出版

1981年 写真集『志摩の海女』日本カメラ社 出版

1985年 『志摩風土記』『志摩の海女』『志摩からのメッセージ』をテーマにフランス(パリ)、イタリア(ボローニア)、オランダ(アムステルダム)、アメリカ(イリノイ大学)など、海外各地で写真展が開催されました。  

1990年 『志摩からのメッセージ 浦口楠一写真集』浦口楠一遺作写真集刊行会/編集

(参照:浦口楠一年譜『志摩からのメッセージ』より)

ソニアさんに海女に惹かれた理由を尋ねました。

「海という自然と一体化して漁をする海女に魅力を感じた。海女のコミュニティーも魅力的。」海女を被写体とした多くの写真集を見た結果、浦口楠一さんの写真集に出会ったといいます。「浦口さんの作品は、ほかの写真家とは一線を画すものだった。彼自身が地域の出身であるためか、海女たちの自然な姿をとらえている。懐古的でもあるが、ウェットスーツ姿の現代の姿もあり、ドキュメンタリーを超えた彼自身のテーマに魅力を感じた。」というお答え。  

ソニアさんは、2018年にも下調べの為に志摩市を訪れています。その時ご遺族から約3万5千点のネガを提供され、今回セレクトした100点余の作品の撮影場所、撮影日などを調査するため、志摩市への再訪となりました。

浦口氏の作品の魅力を語り始めると止まらないソニアさんと、通訳の大塚万紗子さん(IOI国際海洋研究所 日本支部長補佐)との5日間の調査はとても楽しく、同時に限られた時間で精力的に調査をするソニアさんに学ぶことの大きかった日々でした。

調査を通して出会った海女さんたちは今後紹介していきます。

(﨑川由美子)