海女の歴史研究

女性の素潜り漁は、歴史的には世界で日本列島と韓国済州島にしか存在しない。日本では原始社会の遺跡からその痕跡が認められるが、それ以来現代まで、基本的に変わらぬ営みを続けてきた。中世以降、鳥羽・志摩の海女漁は参宮文化と深く関わり、この地域特有のなりわいとして、特に近代以降は観光の目玉ともなっていった。村を離れ遠隔地への出稼ぎも盛んで、明治期には朝鮮半島にまで出漁する。このような海女の歴史を、古文書など文献資料に加え画像、映像などから明らかにしている。

現代の海女の社会学的研究

鳥羽・志摩の海女は2017年に国の無形民俗文化財に指定され、ユネスコの無形文化遺産登録を目指す運動も続けられている。同時に、この地域を象徴する資源として、観光面でも脚光を浴びてきた。だが、文化財や観光資源として注目されることは、本源的には漁業者である海女の生活と生業、海女たちが住まう漁村に、重大な影響を及ぼす可能性がある。文化財保存、観光振興と海女というなりわいと、どのように併存させることができるのか。その現代的な課題を、聞き取り調査の手法を用いて社会学的観点から分析・検討している。

 


海女漁村の景観調査

海女漁が行われている漁村特有の景観を、フィールドワークや測量、聞き取りなどによって調査を進めている。戦後期の古写真(海女関係アーカイブデータベース)の成果も、活用を図っている。鳥羽市の景観計画策定事業と連動しての調査であり、国の重要文化的景観の選定も視野に入れている。

漁獲物増養殖の研究

海女たちは、素潜りによるアワビ漁のみを営んでいるのではない。昔から季節により多様な漁獲物を求め、それらを加工・販売し、他の漁業の手伝いをしてきた。これは現代の漁村でも同様である。海女漁村の発展のため、アワビや海藻などの海女漁獲物に限らず、当地の幅広い漁業資源の増養殖研究を、県や鳥羽市の実験施設と連携しつつ進めている。