【フィールドワーク通信】11. 国崎のノット正月
【フィールドワーク通信】では、調査などで見かけた漁村の一場面を書き残しています。砕けた内容が多いですが、漁村の暮らしが伝わればうれしいです。
フィールドワークは新型コロナウイルスの感染予防対策のもと、相手の許可をとって実施しています。
2021/1/17(日)
今日は国崎の方にお願いして、ノット正月を見学しました。
ノット正月は家内安全、無病息災、大漁祈願などを祈り、正月神を藁船に乗せて送り出す、正月を締めくくる行事です。
各家から女性が1人ずつ浜に出て海に向かってお供え物をし、藁船を作り、火をつけて沖へ流します。
浜にずらっと並ぶお供え物。魔除けの札である「ツメの札」を立て、手頃な石の上に自家製のナマスと小豆ご飯を載せてお神酒をふりかけます。
藁船は「歳徳丸」と呼ばれます。マニュアルはなく、その場で先輩海女さんに教わりながら皆で作るそうです。
歳徳丸は、お昼過ぎから1時間ほどで完成。絶えず町の女性が訪れ、海に祈ったり、藁船作りを手伝ったり、近くに腰掛けおしゃべりしながら待機したりしていました。
歳徳丸を流す時間は、引き潮にあわせて決まります。午後2時頃、合図があり船に火がつけられました。
燃えさかりながら沖へ流れる歳徳丸。浜から送り出すときの、わあっという歓声が印象的でした。
最後にお神酒をいただいたり、正月飾りを浜で燃やしたりしておしまいです。
行事の詳細なマニュアルがなく、その場で教え合いながらものを作る……という光景は他の漁村でもしばしば見かけます。
そのため年によって出来にバラつきがある、という大胆さ(?)がとても面白いなと個人的には思っています。
口承での年中行事の継承、というありかたが残ってほしいなと思う一方で、少子高齢化がすすむなかどのように行事を受け継いでいくべきかという問題もあります。
町を支える大切な年中行事をこの先どうしていくか、町の声をききながら、一緒に考えていきたいです。
(吉村真衣)