【フィールドワーク通信】19. アワビ漁がはじまっています!
【フィールドワーク通信】では、調査などで見かけた漁村の一場面を書き残しています。砕けた内容が多いですが、漁村の暮らしが伝わればうれしいです。
フィールドワークは新型コロナウイルスの感染予防対策のもと、相手の許可をとって実施しています。
志摩では2月頃からはじまっていたアワビ漁。4月下旬から鳥羽でも徐々に解禁されています。
船に乗り込み出漁する海女さん。わいわいがやがや、終始にぎやかです。
海女小屋でウエットスーツに着替え、船上で重りをつけたり、磯メガネに曇り止めのヨモギをすりこんだりと、潜る準備をしていきます。
船で漁場に着いたら思い思いの場所に飛び込んで海女漁スタートです。
船上の海女さんは、漁のあと陸(おか)で再会するやいなや「船から手ぇ振っとったの気づかんだんかー!」とからから笑っていました。
き、気づきませんでした……修行不足です。
この日はアワビ漁の初日でみなさんかなりエキサイトしていたはず。それなのに手を振ってくださる余裕に脱帽しました。
漁が終わると、市場に獲物を持ってきて計量を待ちます。
海女さんたちは待機中、自然とオンビカゴ(アワビを入れるカゴ)の周囲に集まります。お互いの成果を見ながら、誰が大漁した、海の中はどうだった、そんなやりとりが飛び交います。
楽しくもあり、ライバルの成果に闘志を燃やすひとときでもあり、貴重な情報交換の場でもあります。
アワビ漁がはじまると、みるみるうちに漁村が活気に包まれます。その一方、心配なニュースも届きます。
鳥羽志摩では磯焼け(海底の海藻がなくなり砂漠のようになる状態)が深刻で、地域によってはアワビの餌となるアラメがほぼなくアワビもいない、いたとしても痩せてしまっている状況が聞かれます。
また昨年は新型コロナウイルスの影響でアワビなどの需要が落ち込み、価格が大幅に下がってしまった時期もありました。
海女漁はよく「伝統文化」と言われますが、現在の自然環境、社会環境の影響を大きく受ける「現在の」第一次産業でもあります。
海女さん、海士さんが安心して漁に出られるよう、私たちもなにかできることはないかといつも思いを巡らせています。
これからも鳥羽志摩の様々な漁村に訪れていきます。また今年4月には、鳥羽市小浜町に三重大学の水産実験所が移転しました。
これらの機会を通してぜひ各地域の浜の状況、町の状況を共有していただき、将来のための取り組みを一緒に考えていきたいです。
今回掲載した出漁や市場の写真は、許可を得て撮影しています。
漁村に訪れた際は無断で地元住民を撮影する、市場等の施設に立ち入ることはしないでください。
撮影等には地元の方の同意を得てください。
(吉村真衣)