【フィールドワーク通信】22. 師匠と海の貯金箱

【フィールドワーク通信】では、調査などで見かけた漁村の一場面を書き残しています。砕けた内容が多いですが、漁村の暮らしが伝わればうれしいです。
フィールドワークは新型コロナウイルスの感染予防対策のもと、相手の許可をとって実施しています。

2021/6/3

本日は相差へ。地元の若い海女さんに潜りを教え、「師匠」とも呼ばれるベテラン海士さんとお会いしていました。
相差は今年アワビがよく獲れ、アラメも「邪魔なくらいある」ようです。浜値も高く、好調なスタートを切ったことが伝わりました。

「師匠」はアワビのよい棲処をいくつもご存じで、夏磯が始まると順に回っていくそうです。

「秘密の貯金箱を開けにいくんや」
海に貯金箱がいくつもあるとは、とてもわくわくする喩えですよね。
とはいえ、貯まり具合は潜ってみてのお楽しみ。すっからかんのときもあるそうです。
また、昨年の大嵐で、アワビが集まっていた海底の大きな岩がどこかへ吹き飛んでしまったそうで「貯金箱が1つなくなってしまった」と残念がっていました。

さらに、大嵐や台風の影響で海底の地形や環境ががらっと変わってしまい、たくさん生えていたテングサがまったく見られなくなったとのこと。
今では浜に流れつくテングサを拾う程度だそうです。おいしい寒天の原材料であるテングサ、また生えるようになるのかとても心配です。

長さの異なるノミを4種類も駆使し、あらゆる場所にいるアワビを獲るという「師匠」。
アワビのいる場所を熟知しており、海が濁って何も見えない日でも、勘と手の感触で簡単に獲ってしまうそうです。
なんなら普段から、ほとんど視覚には頼っていないのだとか。

「見るなんて、そんな疲れることしやへん」
一緒にいた若い海女さんは「私はそんなんできやんから、岩の隙間を覗きこんで探す。目でじーっと見る分時間がかかって息がきつくなるし、身体も疲れてくる」とおっしゃっていました。
また、水深が浅いと身体が浮きやすいため、海中でとどまり続けるための体力や酸素を消費してしまうそうです。
深い方が身体に負担がかからないらしく、「師匠」も若い海女さんも口を揃えて「深い場所はすっと入っていける」「腹もへこむし、やりやすいんや」。

﨑川さんの記事で、浅いと上下運動の頻度が高くなるので身体に負担がかかるというお話がありましたが、こんな観点もあるのですね。海の話は聞いても聞いても新しい発見ばかりです。

普段、「師匠」は若い海女さん数人と連れ立って漁をしています。

「師匠」がアワビをわんさか見つけるとその場所を若い海女さんに教えてあげたり、若い海女さんが大きなアワビを見つけると大声でみんなに報告したり。
そんな語りから、和気あいあいとした雰囲気を感じました。

現在の鳥羽志摩では、地域によって海藻やアワビ、ナマコなどの資源状況が随分異なります。
もちろん自然環境の要因が大きいとは思いますが、フィールドワークをするうちに、資源管理の方法の地域差にも気づきはじめました。
海藻漁の方法、アワビ漁の方法、アワビの稚貝放流の方法、大量発生しているガンガゼやウニへの対処法などなど。
情報収集を進めながら、各地域の自然環境だけでなく資源管理のありかたも比較していきたいなと考えています。

(吉村真衣)

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