【フィールドワーク通信】23. 波切の路地と市場
【フィールドワーク通信】では、調査などで見かけた漁村の一場面を書き残しています。砕けた内容が多いですが、漁村の暮らしが伝わればうれしいです。
フィールドワークは新型コロナウイルスの感染予防対策のもと、相手の許可をとって実施しています。
2021/7/9(金)
今年度の事業の打ち合わせのため、波切へ行きました。
絵描きの町として有名な志摩市大王町の中心部にあたります。
打ち合わせ後に地元の方の案内で少しまち歩きをしました。
波切を訪れたのは初めて。何を見てもワクワクです。
高台から臨む波切漁港。左に見えるのが市場です。
ここに至るまでには、魅力的な路地や坂、階段がたくさんありました。
夏の緑に囲まれた坂や階段は、どうしてこんなに胸が躍るのでしょう。軽やかに駆けあがりたい気持ちになりますが、汗を垂らしてぜいぜい上るのが関の山でした。
ここは産屋坂(おびやざか)という有名な坂だそうです。絵描きさんたちがしばしばモチーフにする場所なのだとか。
まち歩きの直前、大王美術ギャラリーにて志摩市が所有する絵画の展示を見学しました。
地元で開かれる「大王大賞展」の優秀作品が中心で、様々なタッチや色遣いで波切の町並みが表現されていました。
まちの記憶を人の感性に彩られた絵画として残し、それを地元の行政が集積し展示する。素敵な取り組みだと思いました。
そんな作品群と重ね合わせながら、坂や階段を上ったり下りたり。
漁村には祠がしばしばありますが、波切ではその数が桁違い。2014年の調査でなんと47か所も祠があったそうです。波切の祠については、記事を改めて紹介したいと思います。
漁村を歩くたびに、町並みの多様さを感じます。鳥羽では山と海に挟まれた狭小な土地に並ぶ家々、志摩では奥行きのある土地となだらかな丘に広がる家々。
海女研究センターでは、そんな海女漁村の景観に対し、建築学の先生と学生を中心に調査をおこないその特性を探っているところです。
高台から下りると、次は漁港へ。ちょうど海女さん、海士(男性のアマ)さんの水揚げの時間でした。
波が荒かったため高齢の海女さんは休漁したそうですが、若手の海女・海士さんが獲物を携えて次々と市場にやって来ます。
若手の方は一人で船外機(と地元で呼ばれる小型の動力船)を操縦し出漁する方が多いようです。
鳥羽志摩では小集団での出漁や夫婦一組での出漁が一般的でしたが、それとは異なる新たな出漁スタイルです。
海士さんがアワビを計量している場面です。
﨑川さんの記事にもあったように志摩では磯焼けが深刻で、なかなかアワビが見つからない状況が続いています。
地区によってはカゴに数個のアワビしかなかったものの、漁協の職員さんによると「いつもよりは獲れた方」とのことでした。
頭ではわかっていた鳥羽と志摩の違い。陸の地形も海中の環境も大きく異なることを、改めて肌で感じた一日でした。
最後に、お店で居眠りしていたネコを添えて(そこで寝ていいのかな?)。
(吉村真衣)