【フィールドワーク通信】24. 磯部の御田植祭(1)

【フィールドワーク通信】では、調査などで見かけた漁村の一場面を書き残しています。砕けた内容が多いですが、漁村の暮らしが伝わればうれしいです。
フィールドワークは新型コロナウイルスの感染予防対策のもと、相手の許可をとって実施しています。

2021/6/24(木)

この日は、志摩市磯部町上之郷に鎮座する伊雑宮(いざわのみや)の御料田(ごりょうでん)で御田植祭(おたうえまつり)を見学しました。

伊雑宮は伊勢神宮内宮の別宮で、御田植祭は磯部の人々を中心に行われます。
平安期の衣装を身につけ、田楽にあわせて田植えが行われるほか、青年による荒々しい「竹取神事」など複数の行事があり、五穀豊穣、海上安全が祈願されます。
1990(平成2)年には「磯部の御神田(おみた)」として国の重要無形民俗文化財に指定されました。

御田植祭は盆、正月とならんで「節季」の一つとされ、磯部の人々はこの日をメドに農作業をすすめました。
この日は「七本(しちほん)サメ」が伊雑宮へお参りに来る日として、志摩や鳥羽の海女たちは漁を休んで伊雑宮にお参りする風習もあります。

七本サメとは7匹の大サメのことで、伊雑宮の神の使いです。このうち1匹のサメを、力の強い武士が弓で射取り里人に分けて食べたところ、疫病が流行し多くの人々が死んだともいわれています。

昨年は新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐため、御田植祭は大きく縮小されました。
本来の御田植祭は小中学生が重要な役割を果たしていましたが、限られた数の大人だけが御料田に奉仕する形に変わり、青年が主役の「竹取神事」や御料田と伊雑宮の間で行われる「踊り込み」は中止されました。

そして今年は、磯部の人々の「形を変えてでも伝統をつなぎたい」という強い思いのもと、小中学生や青年も御料田に奉仕する形に戻り、「踊り込み」も再開されました。しかし「竹取神事」は今年も中止でした。

6月中旬、磯部町迫間(はさま)地区の玉泉庵境内へお邪魔すると、感染対策をしっかり行いながら師匠の指導の下、小中学生が稽古に励んでいました。

稽古前に師匠の話を聞きます。

休憩中に宿題をすませる小学生です。

玉泉庵の境内で千秋楽の舞を練習します。

小中学生がつけるフェイスシールドと消毒液です。

6月22日には総練習である大訓式(おおならししき)、24日には本番を迎えます。それは別の記事で紹介します。

(﨑川由美子)

人物の写真はすべて地元の方から掲載許可をいただいています。

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