【フィールドワーク通信】26. 海女さんとアワビ(1)

【フィールドワーク通信】では、調査などで見かけた漁村の一場面を書き残しています。砕けた内容が多いですが、漁村の暮らしが伝わればうれしいです。
フィールドワークは新型コロナウイルスの感染予防対策のもと、相手の許可をとって実施しています。

アワビ漁のシーズンまっさかり。
海女さんのいる漁村がもっとも活気づく季節だといっても過言ではありません。


獲れたばかりのクロアワビ

海女さんはどんな気持ちで海に潜っているのか、私が聞いた限りではありますが、こぼれ話として紹介してみます。

よく耳にするのは、アワビ漁ではとにかく狩猟本能が刺激されるということ。
息が切れるまでのわずかな間に、海中で岩場を探ってアワビを見つけ、傷をつけずに獲らなければなりません。

まず、アワビが好む岩場を知っているかどうかが第一関門です。
資源保護のため、海女漁で潜ってよい時間は1日数時間(地域差あり)と決められています。
そのためアワビが集まるスポットを知らないと、探しているうちに時間切れになってしまう可能性もあります。
初心者の海女さんは、海中の地形を把握し、アワビが集まる場所を覚えることから始めるそうです。


触角を出してカゴを這うアワビ

無事アワビを見つけても、相手も生き物ですから精一杯の抵抗をしてきます。

アワビの殻は岩にそっくり。巧妙に擬態しているため素人目にはなかなか岩とアワビの区別がつきません。
海女さんから「何匹おると思う?」と海底の写真を見せてもらったことがありますが、「2匹…?」と答えたところ「違うよ、ここにも、ここにも」と10匹近く示されびっくりしたことがありました。

光を感知するため、海女さんの身体の影がさっと差すと、ぴったり岩場に張りついて剥がれなくなってしまうこともあるそうです。
アワビは「磯ノミ」という道具を岩とアワビの身の間に差し込み、剥がして獲りますが、磯ノミを差し込むのに手間取ってしまうと、やはり岩にぴったり張りつき身を守ってしまいます。

こうなるとお手上げで、いかに気配を隠してアワビに近づき、傷をつけずに一発で獲るか、その技量が問われます。
傷をつけると価格が大幅に下がってしまうため、その点にも大いに気を遣います。
このように、海ではアワビとの駆け引きが繰り返されるのです。

アワビと磯ノミ(「小ノミ」と呼ばれる小さいタイプ)の写真です。
発泡スチロールに張りついたアワビが取れず一旦諦めたところ。
右側のアワビは隙間なく張りついているのがよく分かります。こうなると歯が立ちません。

海女さんたちの口調はいつも、彼女たちとアワビが対等に渡り合っているかのよう。
海底に転がっているサザエを拾うのとは段違いの興奮があるといいます。

海女研究センターがある鳥羽市立海の博物館には、海女さんが漁のときに撮影した海中の映像が展示されています。
アワビの擬態ぶりや海女さんの手際のよさをぜひ確かめてみてください。

海女さんとアワビの関係、まだまだ紹介していきたいと思います。

(吉村真衣)

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