【フィールドワーク通信】27. 片田の浜清め(1)

【フィールドワーク通信】では、調査などで見かけた漁村の一場面を書き残しています。砕けた内容が多いですが、漁村の暮らしが伝わればうれしいです。
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2021/7/22

志摩町片田の大里浜(おざとのはま)で海女や漁業者が集まり、「浜清め」の神事が厳かに執り行われました。

この日は「海女人日待ち(あまどひまち)」といって片田の海女さんは仕事を休みます。

「竜宮井戸」は片田地区に伝わるむかし話です。

片田がわずかに40軒に満たなかった古い昔のころ、麦崎の沖に、青くすみきった深いところがありました。
竜宮井戸と呼ばれ、あまり深いので普段は誰も潜りませんでした。
ところが、ある天気の良い日に、「アワビやサザエがいっぱいおるにちがいない。」と9人の若い海女さんが竜宮井戸の付近を潜りました。
入り代わり、立ち代わり浮かび上がっては吐く息の音も気持ちよく、静かな波の上に響き、大きなアワビやサザエがわんさと獲れました。

しかし、夕方近くになっても9人の海女は一人も帰って来ません。
村中総出で付近一帯を探しましたが、9つの桶だけが波間に漂っているだけで、海女の姿はついに一人も見つけられません。

村人は、竜宮に連れていかれたのだと言い合い、以来、帰ってこなかったこの日、旧暦6月13日を9人の海女さんの命日として、「海女人日待ち (あまどひまち)」と決め、海の作業を休み、小さな桶を9個作り、竜宮井戸の対岸である麦崎の直下「竜宮ばっち」の所へ供えに行きます。

これは一つには海神の心をやわらげ、一つには海女の冥福を祈るためであると言われています。

(志摩町教育委員会編, 1989, 『志摩町のむかしばなし』より)

午前6時半から大里浜(おざとのはま)で執り行われました。

桶は、今年は11個。むかし話の桶は9個ですが、「年行事」(年間行事の責任者)の判断で11個作りました。

海女がそれぞれの家から「神さんの膳」にエビス貝(穴3つ・奇数)とお神酒、賽銭を乗せて浜に集まります。

八雲神社の宮司さんをお迎えし、厳かに神事が行われます。

続きは別の記事で紹介します。

(﨑川由美子)

人物の写真はすべて地元の方から掲載許可をいただいています。

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