【フィールドワーク通信】29. 菅島の市場(1)
【フィールドワーク通信】では、調査などで見かけた漁村の一場面を書き残しています。砕けた内容が多いですが、漁村の暮らしが伝わればうれしいです。
フィールドワークは新型コロナウイルスの感染予防対策のもと、相手の許可をとって実施しています。
2021/7/22
鳥羽市の有人離島のひとつ、菅島へ行きました。
佐田浜港から定期船で約15分。人口は約500人です。
古くは海女漁や一本釣り漁が漁業の中心でしたが、近年ではノリやワカメの養殖もさかんです。
秋から冬には北西の風がよく吹くことから「風の島」とも呼ばれ、島では海藻や魚介を干す風景があちこちでみられます。
この日は午前中に海女漁があったため、市場での水揚げを見学しました。
これまでの記事でも市場の風景はお見せしてきましたが、今回はより具体的に、市場でどんなことがどんな雰囲気で行われているか紹介してみたいと思います。
漁の時間が終わると、海女さんたちは獲物を持って市場に集まります。
海女さん・海士さんを乗せて港に戻ってくる船外機(と地元で呼ばれる小型動力船)。
菅島では女性の海女さんだけでなく、男性の海士さんも潜ります。
静かだった市場には人が溢れ、あっという間に賑やかに。
獲ってきたアワビをカゴに移します。
海女さんが集まると、互いの成果を見せ合う場面も。
上の写真の海女さんは、自分の獲物を指差して周囲とお話ししています。
立派なアワビが獲れると、誇らしげで晴れやかな表情。アワビに傷をつけてしまうと「傷してしもたわ」と悔しそうです。
漁協の職員さんが、殻についたフジツボなどのゴミを磯ノミで叩いて落とします。
計りにかけているところ。
「クロ◯キロ!」「アカ◯キロ!」(=クロアワビ◯キロ、アカアワビ◯キロ)と威勢よく目盛が読み上げられ、漁協の職員さんが伝票に書き込み、海女さん・海士さんに渡していきます。
伝票はその日の成績表のようなものだとしばしば聞きます。
わいわいと海やアワビの様子、漁での出来事、計量のやりとりなどが響き渡る市場では、皆の間に「きょうもよう頑張ったな」という労いの雰囲気が漂っているように感じます。
その労いの雰囲気にふれることが、市場でのフィールドワークの楽しみだったりします。
続きは別の記事で紹介します。
(吉村真衣)