【フィールドワーク通信】30. 菅島の市場(2)

【フィールドワーク通信】では、調査などで見かけた漁村の一場面を書き残しています。砕けた内容が多いですが、漁村の暮らしが伝わればうれしいです。
フィールドワークは新型コロナウイルスの感染予防対策のもと、相手の許可をとって実施しています。

2021/7/22

前回の記事はこちら

市場でアワビの殻からゴミを取るのに使った磯ノミと、アワビの大きさを測るためのスンボウです。

三重県漁業調整規則では、10.6センチ以下のアワビは採捕してはならないと定められています。
まだ産卵していない小さなアワビを採捕すると、アワビの再生産を妨げてしまうためです。
また、産卵準備中や産卵中のアワビを獲らないようにするため、9月15日から12月31日までアワビ漁が禁止されています。

海女さんはスンボウを携えて出漁し、海上でサイズを計り、小さいものは海に返します。
さらに市場でも二重チェックをし、厳しくアワビの資源管理をしているのです。

実は、前回の記事に載せた写真にも海女さんのスンボウが写りこんでいました。
カゴの中にある木製のスンボウ、見えますか?

アワビを移し替えて空っぽになったスカリ(網でできた獲物を入れる袋)。
タンポと呼ばれる浮き輪には、海女さんが海で使う磯ノミが差し込まれています。

一輪車や原付バイクなどで獲物を持ち寄ります。
タンポとスカリごと獲物を持ってきたり、スカリに入った獲物を保冷バッグに収めて持ってきたり。
思い思いの乗り物、獲物の扱い方でもって市場に集結します。

先の記事のように計量し、伝票を受け取ると帰宅時間です。
地域によっては漁の前後に海女小屋で休息をとりますが、菅島は海女小屋がなく、家と漁場の往復のみだそうです。

市場の風景はいつもどおりの穏やかさですが、菅島でも新型コロナウイルスの社会的・文化的影響がみられます。

菅島をはじめとする離島では、限られた空間に家々が密集しているため新型コロナウイルス感染への危機感があります。
そのため離島への渡航をできる限り抑えるとともに、人が集まる年中行事は軒並み中止か縮小という対策がとられています。
菅島では7月のしろんご祭りが有名ですが、昨年と今年は最低限の祭礼にとどめ、イベントは一切中止されました。

漁村の年中行事は詳細な資料にもとづき実施するというより、その日その場に集まり、詳しい年長者が皆に教えながら行うスタイルが多くみられます。

また資金や人手がたくさん必要な年中行事も多く、数年中止している間に記憶が消え、資金や人手も集まらなくなり消滅してしまうのではないか、という危惧があります。

コロナ禍において、地域を支える年中行事をいかに伝えていけるのか。
フィールドワーク通信で漁村の年中行事についてたびたび発信している裏には、海女研究センターのスタッフ皆の、そんな思いがあります。

(吉村真衣)

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