【活動報告】「現役海女さんと語る!海女の魅力 in海博」第6回を開催しました

鳥羽市立海の博物館と三重大学海女研究センターが主催するイベント「現役海女さんと語る!海女の魅力 in海博」の第6回が1月22日に開催されました。

今回は本土から定期船で約20分の距離にある、答志島和具浦の海女さんにお越しいただきました。

お二人とも60代で答志島生まれ、子どもの頃から海に潜っていたそうです。
海女漁を始めたきっかけを次のように語ってくれました。

小学生のときに自分のお守りがおらへんかったもんで、お父さんとお母さんが潜ってるときに、後を追って海に行きよったんですよ。
「お父さん、アワビがおる、サザエがおる」ってよう教えてあげよった。
本格化したのは22〜23歳の嫁入り前のときくらいかな。

子どものときから祖母も母も海女さんだったので、一緒に行って。今は漁協で禁止されているんですけど、子どもの頃はイソモノをアルバイト代わりに採って、自分たちで売りに行って、売ったお金でおやつを買う生活をしてました。
昔はたくさんアワビがいて、母が1回潜って5個くらい抱えてきたのが思い出に残ってます。
その後よそに出たこともあって、結婚まで潜らなかったです。

和具浦の海女漁の漁期は7月1日からお盆くらいまで。
天気や潮のようすが良好な大潮の日のみ潜るため、実際の出漁日は例年7日程度だそうです。
そのためお二人は海女漁がない時期には陸のお仕事に従事しています。

鳥羽志摩の海女漁村は漁期が多様ですが、和具浦の年間7日程度は最も短いです。
そのため和具では「練習より才能と慣れが大事」だそうです。

また「お父さんにアワビを教えた」というエピソードからわかる通り、和具浦も前回の菅島と同じく男性の海士が操業する地域です。
海の博物館調査では2017年時点で女性が46人、男性が40人とほぼ同数でした。

上の写真は、今回の海女さんが持参してくれた道具です。
皆さんはそれぞれの名前がわかるでしょうか?

答えは次の通りです。
(道具の呼称には地域差や個人差があります)

話題になったのは「サザエの寸取り」と呼ばれるマス状の道具。
サザエのサイズを測るためのもので、底が抜けており、マスから落ちてしまうサザエは資源保護のため海に戻されます。

手に取るとこんなサイズ感。この寸取りを使う海女さんは珍しいそうで、私も初めて目にしました。
多くの海女さんは自分の目でサイズを判断するようです。

道具については面白いお話がたくさんありました。

たとえば、磯メガネの曇り止めに何を使うか。
これまでの「現役海女さんと語る!海女の魅力 in海博」では、ヨモギやフキの葉を使うケースが多く聞かれました。

今回も同じかと思いきや、

「ヨモギです」
「私は醤油です」
「醤油!?」

なんとお醤油を垂らしてから拭くという方法が。
答志で海女をする従姉妹から勧められ、かれこれ3年ほど実践しているそうです。
なお、匂いは気にならないとのこと。
もうお一人は「けっこう醤油いいって言うよね」と同意しつつ、匂いが合わずやめたそうです。
彼女がヨモギを使う際は「台所洗剤で曇りを取ってから、その辺のヨモギをちょんちょん石で叩いてその汁を使う」とのこと。
台所洗剤というひと手間が入っていました。

磯メガネについては、こんなエピソードもありました。

面白いのは、わたしもこれは絶対うそやと思って……和具の長老の、めっちゃアワビ獲るのが上手なおじさんが『メガネをつけてアワビを見ると、レンズの反射の光があたってアワビがキュッと動く』って言うんですよ。
『またあ〜!』と思ったらほんとに動くんですよ。で、『アワビがここにおる』ってわかるんですよ。
それで何回か獲りました。

海女さんとお話ししていると「科学的根拠があるかは分からないけど経験上こうだった」というエピソードがよく出てきます。

アワビと海女さんとの関係からうまれる知恵、身近なものを利用して効率よく漁をするための知恵の豊かさが感じられ、科学的根拠の有無にかかわらず、そんなエピソードを収集してみたいなという思いに駆られます。

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「現役海女さんと語る!海女の魅力 in海博」は今回が最後でした。
登壇してくださった海女さん、来場者の皆さま、心より感謝申し上げます。

(吉村真衣)

 

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第1回 2021年10月23日 鳥羽市答志の海女さん
第2回 2021年11月6日   鳥羽市石鏡の海女さん
第3回 2021年11月13日 鳥羽市国崎の海女さん
第4回 2021年11月27日 鳥羽市神島の海女さん
第5回 2021年12月11日 鳥羽市菅島の海女さん
第6回 2022年1月22日     鳥羽市答志和具の海女さん

 

 

 

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