【フィールドワーク通信】50. 2022年のヒジキ漁(3)
【フィールドワーク通信】では、調査などで見かけた漁村の一場面を書き残しています。砕けた内容が多いですが、漁村の暮らしが伝わればうれしいです。
フィールドワークは新型コロナウイルスの感染予防対策のもと、相手の許可をとって実施しています。
石鏡と並行して、5月20日は相差のヒジキ漁も見学させていただきました。
相差ではヒジキ漁をふくめ、すべての海藻漁が「個人採り」でおこなわれます。
地元の80代の方にお聞きしたところ、記憶にある限りヒジキは個人採りで続けられてきたそうです。
一時期はデアイでしてみたものの、住民の職業が多様化しておりスケジュールを合わせられない世帯が少なくなかったため、個人採りに戻ったとのことでした。
この日は9時から出漁。干潮は14時台のため、朝の時点ではまだ潮が引いておらず、多くのヒジキが海の中です。
そんなとき、海女さんたちは潜ってヒジキを刈るそうです。
数時間すると、皆さんが徐々に戻ってきました。戻る時間は、ヒジキの生え具合や波の状況に応じて個々に判断するようです。
祖父母と孫という組み合わせで出漁されていた方に、収穫物を撮らせてもらいました。
海女である祖母が潜ってヒジキを刈り、祖父と孫がヒジキの引き上げや積み込みをするという役割分担です。
相差ではヒジキを漁港や自宅の敷地で干すそうで、この方たちは自宅に運ぶところでした。
港でヒジキを干す様子。こちらの方は、夫婦と子どもという組み合わせで出漁したそうです。
デアイと比べると、各世帯のスケジュールと労働力で対応できる時間と収穫量を考えて出漁していることがわかりました。
刈る場所は自由に決められるそうです。道でお話ししてくれた元海女さんに「取り合いにならないんですか?」と尋ねたところ、「いやいや、取り合いしとる。取り合いがええのやんか。取り合いが楽しいのや」と笑って教えてくれました。
個人採りとはいえ、浜では通りかかった人が作業を手伝ったり、干している人に声をかけて生育具合を聞いたりと、海に出なかった方々にもヒジキの意識が共有されているようでした。
6月頭に最後の入札があるため、今年の鳥羽志摩のヒジキ漁は5月下旬のこのタイミングで終わりです。
皆さん、お忙しいなか快く見学させてくださりありがとうございました。
次の記事では相差で見かけた別のシーンを紹介します。
(吉村真衣)