【活動報告】「現役志摩の海女さんと語る!海女の魅力 in海博」第5回を開催しました

鳥羽市立海の博物館と三重大学海女研究センターが主催するイベント「現役志摩の海女さんと語る!海女の魅力 in海博」の第5回を2022年11月12日に開催しました。
※レポートの掲載が大幅に遅れたことをお詫び申し上げます。

イベントの概要はこちらから。

今回は志摩市志摩町越賀の60代・40代の海女さんと、60代海女さんの息子の海士さんにお越しいただきました。

先輩海女さんは21歳くらいから海女漁を始めましたが、途中で事務職に就いたこともあり、海女歴としては25年くらいだそうです。
夫を早くに亡くしたため、越賀の実家に戻り、子育てと両立できる仕事として海女を選んだとのこと。
50歳になる前くらいから、別の仕事と掛け持ちするかたちで海女漁を再開しました。

後輩海女さんも23歳くらいで海女漁を始め、その後異なる仕事に就いてから再び海女に戻った点が共通していました。
彼女の場合は30歳くらいで海女一筋になったそうです。

娘が体調を崩すたびに会社を休むのが申し訳ないと思った。海女さんなら(子育て中も)休むことなくできるし、1年を通して収入がある(後輩海女さん)

そんな背景がありつつ、「海が好き」という気持ちが、海女に戻る一番の動機になったと話してくれました。

越賀のアワビ漁は3月14日から9月14日までで、トコブシ(越賀ではナガレコと呼ぶ)やサザエも採ります。また、冬はナマコ漁をします。
海藻はヒジキ、ワカメ、テングサを採り、アラメは減少したため15年ほど禁漁しています。

トークイベントの時点で海女さんは10人、海士さんは15人。潜り方の差はなく、同じような場所に、同じように潜るそうです。
海女小屋は3〜5軒あるものの、海女小屋で暖をとる人は減り、家と浜の往復のみという人が多いとのこと。
これには自動車の普及で家と浜の移動が楽になったため、という背景もあるそうです。
使われなくなった海女小屋は壊されるので、いわゆる「空き家」状態にはならないとの話がありました。

一方で海士さんが「わたしは親から聞かされていたので、必ず(火にあたって)汗をかいてから行くようにしている」と、漁の前後に火にあたる文化が親子で受け継がれる様子も話してくれました。

また、海女さんの次のお話からは、自然環境や自分の身体の変化をみながら柔軟に潜るさまが伝わりました。

潜る場所は日によって変える。その日のうちでも、朝と昼で潜る場所を変える。
3〜7月は朝昼それぞれ1時間ずつ、それから9月14日までは1時間半ずつ潜る。

口開けしたばかりのときは雪解け水で水温がかなり低く、1時間潜っていたら寒さで集中力が鈍ってくる。海女さんが暖をとる時間も必要なので、7月の、水温が上がる時期まではだいたい1時間潜る。

また、口開けしたばかりのときは、休漁のあいだ手つかずだったので獲物が多く、獲りすぎてしまう。そのぶん獲物が減っていくので、7月くらいからは1時間半潜らないと漁にならない(後輩海女さん)

道具を見せてもらう場面では、こんな会話が。

司会:これは何?お守り?
後輩海女さん:私は飴を舐めながら潜るので、これは飴入れ。深いところに潜るとき、耳抜きするのに普通の唾液だと足りないので、のど飴を舐める。1時間半潜るときは袋に2〜3個入れている。

これまでのトークイベントでも道具の様々な工夫をお聞きしてきましたが、飴を舐めるというのは初耳でした。
つくづく奥が深いです。

また先輩海女さんは、漁のときにこんな慣習を受け継いでいると教えてくれました。

船から降りて、潜る直前、タンポにつかまって「ツイヤツイヤツイヤ」と唱える。母から習って、出漁のたびに毎回している(先輩海女さん)

海女さんたちに聞き取りをしていると、現代において信仰のかたちが様変わりしつつあることを感じますが、そんな中で出会ったこのエピソードは印象に残りました。

鳥羽志摩では、海女さんが採った天然の海藻を「海女もん」としてブランド化し、収入向上などにつなげています。
なかでも先輩海女さんは、「ハバノリ」「イロロ」「ケノリ(志摩ではムギワラと呼ぶ)」など、一般にあまり流通していない海藻も積極的に商品化しています。
汁物に入れたり炙ってご飯にかけたり、どれも気軽に楽しめ、香りも歯ごたえも味もよい海藻ばかりです。

時化が続いたりして海女の仕事がないときに、家で内職ができたらいいと思って始めた(先輩海女さん)
美味しいものなので、知ってほしいという気持ちもあった(息子の海士さん)

一方で、近年の海中環境の変化によって、それらの海藻も減少しているそうです。
貴重で美味しい「海女もん」、見つけたらご賞味ください。

越賀の海女さんと海士さん、ありがとうございました。

(吉村真衣)

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第1回 2022年10月15日 志摩志島の海女さん
第2回 2022年10月22日 志摩安乗の海女さん
第3回 2022年10月29日 志摩波切の海女さん
第4回 2022年11月5日   志摩船越の海女さん
第5回 2022年11月12日 志摩越賀の海女さん
第6回 2022年11月19日 志摩片田の海女さん