【フィールドワーク通信】72. 海女漁を記録に残す活動
三重大学海女研究センターでは海女漁や漁村に関する様々な事業を展開していますが、今回紹介したいのは、海女さんの語りを映像で残す活動です。
海女漁従事者が減少するなか、いかに「海女文化」を受け継ぐかが大きな課題となっています。
海女漁従事者を増やすための取り組みも行っていますが、あわせて意識しているのが「今しか聞けない話を残したい」ということです。
海女漁従事者の減少だけが背景ではなく、「今しか聞けない話」はいつの時代にもあるからです。
海女漁は「伝統的」とは言われるものの、不変ではなく、時代の変化にともなって少しずつ形が変わっています。
わかりやすいところでは白い磯着からウエットスーツへの変化など。
また、何のために海女漁をするか、たとえばベテラン海女さんは「それしか稼ぎがなかったから」、若い海女さんは「好きなことを仕事にしたい」など、その思いも時代背景に影響される部分があります。
昨年度は志摩市の90代の元海女さんに、地元や出稼ぎ先の海での海女の経験をお聞きしました。
当時の思い出を鮮やかに、そして方言豊かに語っていただきました。
一方で若手の海女さんにも積極的にお話をお聞きしています。
こちらは移住者の海女さんで、なぜ海女になりたいと思ったのか、移住してから町の暮らしに慣れるまでのプロセス、実際海女漁をしてみてどうだったかなどをお話しいただきました。
お一人お一人に物語があり、楽しさも辛さもあわせ、様々な経緯や思いのなかで海女漁に携わられてきた、携わられていることが伝わります。
このような一つ一つの語りの積み重ねこそが「海女文化」を支える基盤になるのでは、と考えています。
まだ試行錯誤中の事業ですが、今後映像の公開なども検討していきたいと思っています。
海女の皆さまには、ぜひご協力いただけると嬉しいです。
(吉村真衣)
動画に出演されている海女さんには、掲載許可をいただいています。