【フィールドワーク通信】80. 2024年の磯部 御田植祭

【フィールドワーク通信】では、調査などで見かけた漁村の一場面を書き残しています。砕けた内容が多いですが、漁村の暮らしが伝わればうれしいです。
フィールドワークは感染症予防対策のもと、相手の許可をとって実施しています。

6月24日 国指定重要無形民俗文化財「磯部の御神田(おみた)」が行われました。

御田植奉仕は、明治以来の輪番によって磯部9郷と呼ばれた地区に7年ごとに回ってきます。今年の当番区は磯部町五知・上之郷地区。役人(やくびと)たちは5月上旬から稽古に励み、本番の日を迎えました。

今年も伊雑宮への参拝を終えた安乗の海女さんたちと出会いました。

「今年は海士(おとこあま)の子らと来たんさ。漁は厳しいけど、おみたの日はお参りしやなな」と笑顔で撮影に応じていただきました。この日受けた伊雑宮の新しいお札は外湾漁協・安乗事業所の神棚にまつられます。

海女さんに最近の海の状況をお聞きすると、「アラメが生えてきた場所もあるけど、今年も口は開けへん(採らない)のさ。アラメはアワビの餌においといてある」とのお答え。

「アラメを採らなくなって今年で4年目」で、「拾い」と言って流れてくるアラメを拾うだけにとどめているそうです。地域ぐるみで資源管理をする様子をお聞きすることができました。

【竹取神事】

御料田(ごりょうでん)の横に立てられたゴンバウチワは、3回あおぐようにゆっくりと倒されます。

男衆がゴンバウチワの絵を奪い合います。ゴンバウチワが取り付けられている忌竹(いみだけ)は、豊漁や海上安全をもたらすものとして漁業に従事する人たちの信仰を集めています。

【お田植神事】

勇壮な竹取神事の後、小謡(こうたい)・笛の音(ね)・太鼓の音・ササラすりの音を背に、早苗が植えられました。

五穀豊穣と一日も早い志摩の漁場の回復を願って止みません。

(﨑川由美子)