【フィールドワーク通信】82. 鼻谷幸太郎氏写真展「50年前の漁村を歩く」
【フィールドワーク通信】では、調査などで見かけた漁村の一場面を書き残しています。砕けた内容が多いですが、漁村の暮らしが伝わればうれしいです。
フィールドワークは感染症予防対策のもと、相手の許可をとって実施しています。
海の博物館で2022年、写真展「あんた、また来たんか?ー昭和の漁民を訪ねて」を開催した鼻谷幸太郎氏が、鳥羽市大庄屋かどやにて写真展「モノクロ写真展 50年前の漁村を歩く」を7月4〜28日まで開催しています。
会場の「かどや」は江戸後期から大正期まで薬屋を営んでいた廣野家の屋敷で、登録有形文化財にもなっています。
現在は保存会によって保存・継承が図られるとともに、展示やイベントなど交流の場としても利用されています。
温かみのある会場に、鼻谷氏の手によって選ばれた漁村の写真が約40点並んでいます。
鼻谷幸太郎氏と息子の鼻谷年雄氏とは、2年前に写真を海女研究センターに寄贈していただいたのをきっかけに、写真の整理をお手伝いしてきました(参考記事:写真展「あんた、また来たんか?―昭和の漁民を訪ねて」への協力)。
写真をいただいたときの、目の前に想像もしなかった宝の山が広がっていた感覚はいまでも忘れられません。
寄贈された写真は、海女研究センター事業の写真展でも展示してきました。
波切で1970年に撮影された、堤防沿いにムシロで作られた海女小屋で海女が休息をとる写真。
現在はトタンやコンクリートでできた小屋が増え、海女の人数は減少しているため、もう見られない貴重な光景です。
こちらは、現在ではほぼなくなってしまったメオト船の海女漁に、子どもが同乗している写真です。
キャプションには「夫婦船の姉妹 夫婦船に2人の女の子。何を見てるのかな?」とあり、ほのぼのした雰囲気が伝わります。
漁村の笑顔や何気ない表情を克明にとらえる鼻谷氏の写真群は、駆け出しフィールドワーカーの私ではとうてい追いつけないものであり、見るたびに感嘆の息が漏れます。
50年前の漁村の息遣いを感じに、皆さまもぜひご来場ください。
(吉村真衣)