【フィールドワーク通信】83. 布施田の浜まつり

【フィールドワーク通信】では、調査などで見かけた漁村の一場面を書き残しています。砕けた内容が多いですが、漁村の暮らしが伝わればうれしいです。
フィールドワークは感染症予防対策のもと、相手の許可をとって実施しています。

7月16日(旧歴6月11日)、志摩町布施田の「中の浜」に面した旧布施田漁協水産物荷さばき施設で「浜まつり」が行われました。従来は浜に祭壇を設えますが、「雨の予報が出とるでな」と今年は急遽場所が変更されました。

殿岡神社の宮司のおはらいを受けたあと、漁協代表、海女組合代表、海女代表の順に玉串を奉奠し、海上安全と豊漁を祈ります。

神事が終わると白い磯着姿の海女の代表2人が、足がつかなくなるくらいまで海に入り、御舟(みふね)を流します。

御舟はわらで作られた円形の舟で4本の小さな幣(ぬさ)を立てて、中央には2つ重ねの餅が置かれています。流した後は、後ろを振り返ったり、しゃべったりしてはならないとされています。

2人の海女が海から上がった後、参列者が順に祭壇の前に置かれた3つの丸石に洗米と塩をお供えして、布施田の沖に浮かぶ小島(おしまさん)に手を合わせます。この3つの丸石は、小島の石で普段は近くの浅間さんの祠に「預けてある」そうです。

海を見下ろす浅間さんの祠に石を預けます。

海女さんに最近の海女漁についてお聞きすると、
「今年は3月に口が開いて(海女漁が始まって)、出日(でび・出漁した日)はわずか13日か14日くらい。エサ(海藻)がないから、アワビもいない。たま~に誰かが獲ってくるくらい」とのお答えでした。

海女さんたちにとって厳しい日々が続いています。

(﨑川由美子)