【フィールドワーク通信】48. 2022年のヒジキ漁(1)
【フィールドワーク通信】では、調査などで見かけた漁村の一場面を書き残しています。砕けた内容が多いですが、漁村の暮らしが伝わればうれしいです。
フィールドワークは新型コロナウイルスの感染予防対策のもと、相手の許可をとって実施しています。
漁村の春の風物詩、ヒジキ漁を今年も見学させていただきました。
鳥羽志摩地域では海藻漁の方法として、「デアイ」と「個人採り」の大きく2種類があります。
デアイは各世帯から総出でおこなわれる共同作業で、売上は皆で等分されます。
個人採りは主に個人や世帯単位でおこなわれ、採った分だけ収入になります。
どちらが選ばれるかは時代や地域、海藻の種類によって様々です。
今回は鳥羽市石鏡町、相差町のヒジキ漁を紹介します。
まずは石鏡町、5月19〜20日にかけて見学しました。
ここでは「デアイ」のヒジキ漁がおこなわれます。
かつては各世帯の15歳から54歳までの男女が全員参加しましたが、人口減少にともない現在では55歳以上の方も続投しているほか、町外から家族や親戚が帰省して参加することもあります。
なお、石鏡ではワカメやアラメ、フノリは個人採りです。
ヒジキ漁は4〜5日単位でおこなわれ、私が訪れたのは4日目と5日目でした。
今年のヒジキ漁は今回が最後ということで、皆さん並々ならぬ気合が入っていらっしゃいました。
昨年の石鏡のヒジキ漁の様子は以下の記事にあります。
【フィールドワーク通信】17. 2021年のヒジキ漁(1)
【フィールドワーク通信】18. 2021年のヒジキ漁(2)
この日は干潮が14時すぎだったため、それに合わせて11時頃からの出漁でした。
私たちは陸から追いかけます。途中で、前日までに採られた大量のヒジキが保管されているのを見かけました。
潮が引きはじめ露出した岩場で、さっそく作業が開始されます。
海女さんがヒジキを刈り、男性がそれを船に積んで港に運ぶという連携です。
不安定な足場をものともせず、テンポよく鎌でヒジキを刈っていく海女さんたち。
今年も皆さんの元気な声が風に乗って届きました。
手は止まることなく、刈り終わればすぐ次の場所へ移動していきます。
磯まで下りて見学していると、近くを移動していた海女さんが寄り道し、少しだけ生えたヒジキを刈っていきました。
そのときの「見つけてしもたでほっとけやんわ」という言葉に象徴されるように、海女さんたちは少しも取りこぼしのないようきっちり刈っていきます。
男性たちは、1つ10〜20キロもあるヒジキの袋をひょいと担ぎ、近くに着けた船に積み込んでいきます。
私も持たせてもらいましたが、水分を含んだヒジキはずっしり重く、なかなか持ち上げられませんでした。
それを慣れた手つきで受け渡していく皆さん。中学校を卒業してからずっとヒジキ刈りに参加してきた方もいて、作業の要領が身にしみついているようでした。
港に集められたヒジキはクレーンでトラックに移し、干場に運ばれます。
続きは次の記事で紹介します。
(吉村真衣)