【フィールドワーク通信】51. 2022年のヒジキ漁(4)
【フィールドワーク通信】では、調査などで見かけた漁村の一場面を書き残しています。砕けた内容が多いですが、漁村の暮らしが伝わればうれしいです。
フィールドワークは新型コロナウイルスの感染予防対策のもと、相手の許可をとって実施しています。
5月20日の午後、鳥羽市相差町の漁港で「腰が痛てな」と、座ったまま器用にフノリを干す方に出会いました。
狙いを定めてフノリを投げます。
フノリは絨毯を敷いたように、堤防にきれいに広がっていきます。
フノリとは、紅藻類フノリ科フノリ属の海藻で、一般的には布海苔と書きますが、布糊と書かれることもあります。
味噌汁の具や刺身のツマ、サラダの具材としてはもちろんのこと、古くには「天然糊」として、織物の糊付けや漆喰(しっくい)の材料に利用されてきました。
この日はヒジキの口開けでしたが、今年は伸びが悪いため、「朝から火に当たって遊んで」いましたが、「常に仕事せんとおると筋肉が衰えるでな」と軽トラックで漁場の近くまで行き、磯場に降りて採ったそうです。
フノリを干し終えると、「ヒジキはこれだけや」と、袋からバサッと広げました。
ヒジキに付いたゴミをとりながら「16歳の時に海女になってな、米も味噌もみんな持って」、紀州の方へ「海女の稽古しに出稼ぎに行った」と教えてくださいました。
紀州方面への出稼ぎは9年間続いたそうです。
最初の1年は「アワビをなんもよう採らんかったけど、」稽古をして「ジアマ(その土地の海女さん)にも負けんと一番ようけ採りよった」。
昭和9年生まれだという海女さんの軽トラックの荷台には、長年漁を共にしてきた大きなハンギリ(磯桶)が積まれていました。
お忙しい中、お話を聞かせてくださった相差の海女さんありがとうございました。
(﨑川由美子)