【フィールドワーク通信】52. 伊雑宮御料田の水苗代作り
【フィールドワーク通信】では、調査などで見かけた漁村などの一場面を書き残しています。砕けた内容が多いですが、漁村の暮らしが伝わればうれしいです。
フィールドワークは新型コロナウイルスの感染予防対策のもと、相手の許可をとって実施しています。
6月1日、志摩市磯部の伊雑宮(いざわのみや)の御料田(ごりょうでん)に設えた苗床に、「作長」の谷崎晴彦さんによって「イセヒカリ」の種もみが撒かれました。
これは「水苗代作り」と呼ばれます。
御田植祭(おたうえまつり)で植える苗を育てるのが「作長」です。
作長は神宮司庁より任命され、苗代を整えることから収穫まで御料田の管理をします。
御料田とは、御田植神事が行われる水田を指します。
伊雑宮神職のお祓いを受ける作長(中央)と助っ人の弟さん、御田植祭の師匠、谷崎豊さん(向かって右)。
苗床に肥料入りの土を撒きます。
種もみは雑菌を消毒するため、約60℃のお湯に10分間浸して「温湯消毒」をし、その後3日間水に漬けて芽出しをさせます。
温湯消毒した種もみは無菌のため、より細かい管理が必要になります。
「芽が出すぎてもいかん。なかなかデリケートやでな。昔は風呂の残り湯に漬けたもんや」と作長さん。
手ですくって見せてくれた種もみから、小さな白い芽が出ていました。
苗床にびっしりと種もみを蒔いた後、土をかぶせます。
苗代用のビニールトンネルを作ります。
中の温度が上がりすぎないようビニールには小さな穴がたくさん開いています。風で飛ばされないようにクリップで固定します。
「あんまり(ビニールを)張りすぎると、破れるぞ」と弟さんに声を掛けていました。
さらに鳥よけの網をかぶせてクリップで固定します。
最後に水をはります。
芽が出るまでの「一週間ほどが勝負」だそうです。
「田が湿っとるくらいにしとかんと、水をはりすぎても芽が出やへんのや」
御田植祭前日の6月23日に行われる「苗とり」の日まで、20㎝くらいに育つよう、毎日3回見回ります。
「順調に育ってくれるのを祈るばかりやわ」と、作長さんの気の抜けない日々が始まりました。
(﨑川由美子)
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