【活動報告】「現役志摩の海女さんと語る!海女の魅力 in海博」第4回を開催しました
鳥羽市立海の博物館と三重大学海女研究センターが主催するイベント「現役志摩の海女さんと語る!海女の魅力 in海博」の第4回を2022年11月5日に開催しました。
※レポートの掲載が大幅に遅れたことをお詫び申し上げます。
イベントの概要はこちらから。
今回は志摩市大王町船越の60代の海女さんお二人にお越しいただきました。
先輩海女さんは30歳で海女を始めましたが、途中で体調との兼ね合いから休むこともあったそうで、海女の仕事を「病気の後でも、ゆっくり戻ろうと思えば戻れる仕事」と表現していました。
他の仕事もしたが、人と付き合うのがうまくいかない。海に行っていると、喋らなくていいし、アワビを獲ればいいだけ。自分のペースで潜れるから、海女が最適(先輩海女さん)
後輩海女さんは真珠養殖業のかたわら、閑散期の2〜3月に潜っていましたが、本格的に海女を始めたのは4年前。トータルでは30年くらい潜っているそうです。
船越以外の漁村で生まれた先輩海女さんは、子どもの頃海女についてあまり良い印象がなかったと教えてくれました。
私の地元では、女は潜らないと生活できなかった。女に生まれたら海女さんになるしかなかった。でも、私は海女さんが嫌いだった。声が大きいし、色が黒いし、品がないし、自分の親の見分けがつかない。真っ黒で、自分の母親だと思って手を繋いだら別人で、「うち帰りな」と言われたことがあった(先輩海女さん)
今でこそ海女さんは環境に優しい漁法、働き方が自由な仕事という認識もあるが、当時はそんな印象がなかったのかと尋ねたところ、「なかった。海女が嫌いで縁がないと思っていた」とのことでした。
それでも海女を始めたのは、
海女さんをする前に大きな病気をして、病院の先生が「残りの人生好きなことをしなさい」と言った。親戚のおばさんが海女さんだったので、海へ行って足をつけて、大潮の時だけ遊んでいたらだんだん面白くなった。そうしたら、病気のことを忘れた。時々薬を飲みながら、用心して潜る。海女さんは自分が行きたい時だけ行けるから、調子が悪い時は行かない。迷惑をかけるから。そうしたら、元気に生きている(先輩海女さん)
船越では女性に生まれたら必ず海女になるというより、海女漁を好きな人だけがするという雰囲気があるそうです。
「真珠のほうがよかった。真珠のほうが収入もあるから。海女さんは下という意識があった」という言葉から分かる通り、地域の産業構造によって海女漁の位置づけも異なることを実感しました。
船越では2月に口開けがあり、9月14日までアワビ、サザエを採ります。
海藻はワカメ、ヒジキ、テングサ、フノリを採ります。
かつてはアラメも採っていましたが、磯焼けの影響でほぼなくなってしまいました。
10月からは海女漁と同じ漁場でイセエビの刺網漁が始まるため、家族とそれをしたり、パートに出たりするそうです。
観光地なので、ホテルや旅館、観光協会が主催している海女小屋体験などと兼業をする人が多いとのことでした。
海女の漁期以外も働く理由として、金銭面だけでなく「 冬にだらだらしていると、次に潜る時に苦しいから」「次潜る時のために運動しておかないと」とのこと。
オフシーズンも身体を動かさなければいけないというのは、いろんな地域の海女さんからよく聞く言葉です。
(漁具一式を持参してくださいました)
磯焼けの状況については、次のようなエピソードがありました。
今年は全然アワビがなくて、「20個ないとガソリン代にもならへんから」って、船越全体で20個アワビがたまったら商人(仲買人)さんが買いに来てくれることになった。すぐに20個もたまらないから、2回ぐらいかな、今年来たのは。
船越の海女・海士が皆潜ってもアワビがなかなか集まらないというのは、衝撃的なお話でした。
それでも海に潜るのは諦めなかったそうです。
行かなかったらゼロだから。行くと、いつか当たるかもしれないから。潜れる日が限られているから、潜れるときに潜っておこうと。昔から、「口開けすると血が騒ぐ」って船越の人が言う。獲られちゃうというか、たくさん獲れなくても、参加することに意義があるというか。みんな行きたいみたい。
「海が空っぽ」という船越では、それでも海とのかかわりを維持するため、海女さんが潜る姿をお客さんに見せるという取り組みを始めました。
子どもの団体が海洋学習の一環で訪れたり、観光関連の会社がモニターツアーに訪れたりと、徐々に取り組みが進展しているそうです。
磯焼けで苦しい中でも、前向きに海とのかかわりを模索する船越の皆さんの姿勢が心に残りました。
船越の海女さん、ありがとうございました。
(吉村真衣)
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第1回 2022年10月15日 志摩志島の海女さん
第2回 2022年10月22日 志摩安乗の海女さん
第3回 2022年10月29日 志摩波切の海女さん
第4回 2022年11月5日 志摩船越の海女さん
第5回 2022年11月12日 志摩越賀の海女さん
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