【フィールドワーク通信】68. 石鏡のかづきおり

【フィールドワーク通信】では、調査などで見かけた漁村の一場面を書き残しています。砕けた内容が多いですが、漁村の暮らしが伝わればうれしいです。
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2月16日、鳥羽市石鏡町でおこなわれた海女さんの年中行事、かづきおりを見学しました。

(2021年の記事はこちら。行事の詳細はこちらをご参照ください)

海女漁のシーズンが始まる前、町じゅうの海女さんが集まり海の神様に大漁や安全を祈ります。

今年は13時からと聞き勢い勇んででかけたところ、まだ静かな石鏡町。
海女さんたちの間でしばらく「13時から」「14時から」の説が飛び交っていましたが、13時半からで着地しました。

海女組合の役員さんがお参りしたあと、町内放送で開始の旨が告げられると(石鏡では「おめく」と言います)、一斉に海女さんが動き出します。

お参りの順は例年通り、旧海岸線沿いの堤防→漁協の八大龍神→町内の石碑→墓場の下の六地蔵→船をもっている人は船に、という流れです。

この写真で手を伸ばしている海女さんはいつも、アワビの殻でモチの型をとっていらっしゃいます。

お供えのあと、掛け軸を手でなでる海女さんも。
個々のこだわりや思い入れに触れられる瞬間です。

こぼれ話ではありますが、かづきおりを見学するたび、海女さんたちから大量のモチをいただきます。
有無を言わさず「モチやるわ!」と私の手を引くその勢いに、石鏡の海女さんのパワーをいつも感じます。

13時半にかづきおり開始の旨がおめかれると港がわっとにぎやかになり、1時間たらずで行事が終わるとまたいつもの静けさが訪れ、海女さんたちは再び各々の生活に戻っていきました。

今年も無事に、ハレのひとときをご一緒できたことを嬉しく思います。

(吉村真衣)