【活動報告】「現役鳥羽志摩の海女さんと語る!海女の魅力 in海博」第1回を開催しました
鳥羽市立海の博物館と三重大学海女研究センターが主催するイベント「現役鳥羽志摩の海女さんと語る!海女の魅力 in海博」の第1回が10月21日に開催されました。
イベントの概要はこちらから。今年で3年目になるイベントです。
今回は志摩市志摩町和具の海女さんお二人にお越しいただきました。
70代と50代の海女さんで、どちらも海女歴は約40年です。
和具には現在19人ほどの海女さんがいて、最年長は79歳、最年少は46歳です。
50代の海女さんは和具生まれで、18歳で出産、19歳で海女デビューしました。祖母やおば、従姉妹が海女をしており、ひとつのグループを作っていたため、そこに誘われたのがきっかけだそうです。冬場は和具の電機工場や水産加工工場などでアルバイトをすることもありました。
70代の海女さんは九州生まれで、子どもの頃に和具に越してきました。結婚前は勤めに出ていましたが、出産を機に婚家の親戚から「海女は生活がしやすい」=時間をフレキシブルに使えることや、自分の腕次第で現金収入を得られることを聞き、魅力を感じて始めたそうです。
冬場は民宿など他の仕事をしていました。
お二人とも子どもの頃から潜って遊んだり、流れ着いた海藻を拾ったり毎日のように海に親しんでいたそうです。
とはいえ海女漁は遊びとは異なる大変さがあったそうで、
そこそこ腕あがるまで、3年はかかるって言われたんですけど。私が始めた頃はアワビもサザエもたくさんいてけっこう収入になった。
大変でしたけどね。稽古するときはめちゃめちゃ大変でしたけど、慣れるまでは。
頑張れば頑張るほどへろへろで、帰ってくるときに。母親に助けてもらいながら、なんとか。
収入になりはじめたら、夏が来るのが楽しみで(先輩海女)
(漁の開始を知らせる)旗が上がるといやでも(船から)飛び込まなあかん(笑)昔の3月の磯は今よりもっと寒かった。飛び込んだ瞬間に「冷たいっ!」て第一声で叫ぶくらい(先輩海女)
体重も夏だけで10kgぐらい増減する。それくらい大変(後輩海女)
と語ってくれました。
一方で、現在は和具でも磯焼けの影響で獲物が極端に減少しています。
今は痩せへん(笑)深いとこ行っても獲物がないんで、笑ってしまうくらい浅いとこやないとね、サザエがいないんです(先輩海女)
手で這うくらいの浅さ、潜るというより頭つっこむくらい。そういうとこじゃないと獲物がいなくなってしまった(後輩海女)
和具では3月14日から9月14日までがアワビ漁の時期で、そのうち「日柄の良い日」が最初の口開け日になるそうです。
7月にはアカウニ、人によってはトコブシも捕っていました。
10月からはイセエビ、1月からナマコを捕りますが、イセエビは全員ではなく「えらい海女さん」=海女歴を重ね、海女の腕がついた人が捕りに行くならわしだったそうです。
また人数制限もあり、10人前後でとどめられていたとのことでした。
お二人は海女デビューから10年以上が経って実力がつき、さらに先輩の引退などで人数が減ったタイミングでイセエビ漁に参入しました。
しかしいずれの獲物も現在は極端に減り、ほとんどみないものもあるそうです。
全滅いうてもいいくらい(後輩海女)
海藻は2月にワカメ、3月にヒジキ、夏にテングサやアラメを採っていましたがこちらも「ほぼ全滅」で、ヒジキは口開けなし、テングサはようやく生えたので今年3年ぶりに自家消費用に採取したそうです。
後輩海女さんは漁具を持参してくださいました。
海上で目立つようにペンキで赤く塗っています。
エビヒキは3年間のトークイベントのうち初登場の道具です。海博展示物のエビの模型を使って、エビ漁の様子を再現してくださいました。
片手はエビの目を覆うようにし、片手はエビヒキを使ってエビの中心部をおさえます。そうすると暴れることなく捕まえることができるそうです。
とはいえ抵抗されることもあり、もみ合ってケガをする場合も。
足や角の折れた数や部位によっては商品価値が下がるため、格闘中も十分気を遣うそうです。
和具の海女さんは、安全や大漁のため、出漁のときに青峰山正福寺や石仏の方向におがんだり、船から飛び込むときに「ホイ、ツイヤ」と唱えたりするそうです。
また旧暦3月と5月には休息日である「日待ち」があり、塩で作ったあんこを用いた2段重ねのモチを供えます。
上段は岩の上にいるアワビをあらわし「アラケ」と呼び、下段は岩の裏側にはりついたアワビをあらわし「ゴンゾウ」と呼ぶそうです。
海女漁はつくづく「最高の商売」だと、お二人は繰り返し話されていましたが、やはり磯の環境の変化が大きな障壁になっています。
海の中が変わったら(状況が)良くなるかな、と期待はしているけど。(海の環境への対応について)考えていることはあるけど、誰も聞いてくれへん(先輩海女)
一番近いところで海を見て、感じてきた海女さんたちの考えをいかに政策や研究の場に届けるか、その使命も改めて感じる、重い一言でした。
次回は11月4日、布施田の海女さんです。ぜひご参加ください。
和具の海女さん、本日はありがとうございました。
(吉村真衣)